1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

【抄読会】The developmental stage of the hematopoietic niche regulates lineage in MLL-rearranged leukemia

以前も抄録和訳で取り上げたこの文献について通っている大学院ラボの抄読会で取り上げました。内容を簡単にまとめます。

 

★Introduction

白血病は年齢によってその特徴が異なる。代表的なところで言えば、小児では急性リンパ球性白血病(ALL)が多いのに対して、成人では急性骨髄性白血病(AML)が多いなどの違いである。また、治療反応性も同じく年齢によって異なる。

 

・乳児ALL(予後が悪いことで知られている)でしばしばみられるMLL遺伝子再構成は、患者の年齢によりALLやAMLを発症する。(MLLに関してはマウスモデルも存在するが、マウスでは主にAMLを発症する)。

 

・こういった背景から白血病のorigin(遺伝子変異など)が同じであっても、年齢による微小環境変化が発症病型に関与していることが示唆され、今回の実験を行うに至った。

 

★Result and Discussion

・8週齢成体マウスの細胞にMLL-AF9をベクターを用いてトランスダクションし、成体マウス(8週齢)、新生児マウス(0-1日齢)に移植。

→成体マウスでは骨髄単球性AML、新生児マウスではALLの発症が確認できた。

(FACSではBリンパ球マーカーB220陽性細胞が新生児マウスで有意に多いことが確認できた。形態学的にも成体はAML、新生児はALLの特徴をそれぞれ有していた)

 

・新生児マウスは移植から白血病発症までの間に成長し大人になってしまう

→連続移植(serial transplantation)を用い、発症までの日数を短縮

→移植を重ねるごとに発症日数は早くなり、また新生児でのみ220陽性細胞割合増加を確認

→新生児微小環境がBリンパ球分化を促進する可能性がある。

 

・年齢によって発現が異なるサイトカインがこれに関与しているのではないか?

→成体マウスと新生児マウスでケモカイン・アッセイを行い、分泌されているサイトカインの違いを分析

→Ccl5、Ccl6、Chi3l1の3種類は、新生児では分泌されておらず、生体でのみ分泌されている。

→過去の文献でも年齢特異的Lineage biasに関与しているのではないかということが報告されているCcl5をピックアップし、実験。

 

・Ccl5と白血病細胞をともに培養→B220陽性細胞が減少

Ccr5インヒビター(Ccr5はCcl5の受容体)とCcl5とともに白血病細胞を培養

→B220陽性細胞減少の程度が弱まる。

 

・Ccl5で白血病細胞を処理すると、それを移植したマウスの発症時期を遅らせるとともに発症率を下げることが分かった。

 

・Ccl5ノックアウトマウス白血病細胞を移植→ワイルドタイプマウスと比べてB220陽性細胞が有意に多く検出。

 

★Conclusion

白血病のOrigin(遺伝子変異など)が同じであっても、年齢に伴う微小環境の変化が発症する白血病の表現型に影響する可能性がある。

 

・さらなる研究により新しい治療につながる可能性がある。

 

・Ccl5など、年齢に応じて変化するサイトカイン、微小環境のさらなる研究が必要である。

 

★抄読会中に出た質問など。。。

・発病期間短縮のための新生児Serial transplantationは具体的に何日たったら移植している?→本文中に記載なし。

・Ccl5添加は治療に使える?→生存期間延長しており使える可能性がある。

・新生児白血病細胞を移植する実験はやっている?

→今回は成体(8週齢マウス)細胞へMLL-AF9をトランスダクションした細胞の移植のみ

→過去の文献では微小環境が変わってもCell of originが変わらなければFateは変わらないことを示唆する研究もあり。今回は微小環境に注目した文献だが、白血病発症に関してはOrigin、Environmentどちらも寄与していることと思われる。