1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

【読書感想】ライ麦畑でつかまえて

先日参加した読書会の課題本であったため、読了しました。村上春樹訳が出た際に大変話題になり、その際に読もうと試みましたが挫折し、今回が再チャレンジでした。今回は昔ながらの野崎孝訳で読んでみました。

 

青春小説の傑作と言われていますが、個人的にはそれほど響く内容ではなかったというのが正直なところです。主人公のホールデンが、自分の周囲の人や世の中の欺瞞、おかしなところを批判していくのですが、思春期のこじらせ男子にありがちな愚痴をぶちまけたブログを読んでいるような気分で、特に物語の起承転結もなく盛り上がりどころもあまりないような展開で退屈に感じる部分も多々ありました。主人公と著者の感受性は非常に鋭いことは分かるものの、では中高生男子の愚痴ブログに文学的価値があるかというと…という気分でした。小説である以上、物語を通しての成長や気づき(必ずしもそれがポジティブな方向でなくとも)を与えるものであってほしいと個人的には思っているのですが、あまりそのような展開ではなかったかな、、というのが個人的感想です。

 

最後の最後の場面で、妹のフィービーと心通わせる場面は非常に抒情的で美しく、ここは小説的な面白さを感じることができました。(ラスト10ページくらいですが。)

 

読書会参加者からは、ホールデンは日本でいうところの尾崎豊的な存在なのではないか、という意見があり、(それはなるほどと思う部分もありましたが)しかしホールデンには尾崎豊さんほどのカリスマ性も信念もないではないかと反論すると、「そこがいい」「名作たるゆえんだ」とさらに反論を受けました。つまり、尾崎豊さんのようにもっとわかりやすくかっこいい主人公・ストーリー展開にすることもできたが、あえてそういったわかりやすい描写をせず、実際の人間というのはこんなもん、というのを描いているのがサリンジャーの非常に優れているところだというのです。なんとなく分かったような腑に落ちないような気分もありますが、参加者の中には再読時に面白さが分かった、村上春樹訳の方を読めば面白く感じる、といった意見も散見されたので、チャンスがあればまた読みたいと思います。