1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

Prolonged survival and phenotypic correction of Akp2(-/-) hypophosphatasia mice by lentiviral gene therapy.

 2011 Jan;26(1):135-42. doi: 10.1002/jbmr.201.

Prolonged survival and phenotypic correction of Akp2(-/-) hypophosphatasia mice by lentiviral gene therapy.

 
低ホスファターゼ症(HPP)は遺伝性・全身性の骨格疾患であり、 tissue-nonspecific alkaline phosphatase (TNALP)アイソザイムをコードしている遺伝子の変異で起こる。HPPの臨床上の重症度は多岐にわたっているが、くる病や骨軟化症に似た症状を呈する。TNALP ノックアウト (Akp2(-/-))マウスは、最も重症である乳児型HPPを模倣したマウスであるが、TNALP欠損マウスは外見上は正常に生まれるものの、成長不全、骨形成不全、てんかん発作などにより20日間程度で死んでしまう。今回の研究は、骨標的型TNALPを発現させたレンチウイルスベクターを Akp2(-/-)マウス新生児に頸静脈に注射するというものである。この結果、治療後のAkp2(-/-)マウス血漿中においてアルカリホスファターゼ活性増加が見られること、さらにそれが高い数値で生涯にわたって持続するということを発見した。また治療後マウスは10か月以上生存し、正常な身体活動性、外見を呈した。てんかん発作も治療後のAkp2(-/-)マウスでは一切確認されず、骨格X線検査では、遺伝子治療による骨形成の著明な改善が確認された。これらの結果から、TNALPノックアウトマウスにおける重症新生児型HPPは、新生児期のレンチウイルスベクター単回注射で治療できる可能性を示唆している。