The bone marrow microenvironment at single-cell resolution
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The bone marrow microenvironment at single-cell resolution
Nature2019)
569, 222–228 (骨髄微小環境は造血において重要な役割を果たしているが、その分子学的構造やストレス応答については十分にわかっていなかった。今回我々は、マウス骨髄血管、血管周囲、骨芽細胞集団を単細胞解析を用い、恒常性とストレス誘導下での造血について解析を行った。今回の解析によって、これまで価値がないと思われていたレベルの骨髄ニッチの細胞不整合性を明らかにしたとともに、造血前成長因子、ケモカイン、膜結合リガンドの細胞起源を解明した。我々の研究によりストレス下においては、脂肪細胞の血管周囲細胞への傾倒など、ニッチ構成要素の多大な転写因子リモデリングが起きることが分かった。また、ストレス誘導性の変化の中で、vascular Notch delta-like ligands (encoded by Dll1 and Dll4)が抑制されていることが分かった。Dll4が欠損していると、造血幹細胞は、未熟な状態で骨髄転写プログラムを誘導するのである。これらの所見は我々の骨髄ニッチの細胞構造への理解をより正確にするとともに、ストレスに対し非常に高感度に反応する動的分子構造を明らかにした。また、単細胞トランスクリプトームデータが、独立したニッチ細胞集団により造血調整の評価に役立つことを示している。
Programmable bacteria induce durable tumor regression and systemic antitumor immunity
Programmable bacteria induce durable tumor regression and systemic antitumor immunity
Nature Medicine2019)
25, 1057–1063 (Synthetic biology(合成生物学)は、生きた細胞の遺伝子プログラムを通じ新たな治療の時代を迎えている。この変革的アプローチにより、多様な環境をインテリジェントに感知し、応答するように設計されたシステム、究極的にはこれに分子ベースの治療を超えた特異性と有効性が付加されたシステムの構築が可能となった。1つ注目されている分野として、in vivoにおいて治療目的のpayloadを選択的に放出する運搬システムとしてのバクテリア設計が挙げられる。今回我々は、腫瘍微小環境内においてのみ溶解し、CD47のナノボディ・アンタゴニスト(CD47nb)(※1)を放出する、非病原性大腸菌を開発した。このCD47は、いくつかのヒト腫瘍細胞において過剰発現している貪食抑制受容体である。我々は、CD47nbをtumor-colonizingバクテリアを用いて運搬することによって腫瘍浸潤Tリンパ球(tumor infiltrating lymphocyte)の活性を増加させ、早急は腫瘍縮小を促し、転移を防ぎ、結果として同系マウス腫瘍モデル(※2)の長期生存を可能にすることができた。さらに我々は、CD47nb発現バクテリアの局所注射より腫瘍抗原特異免疫反応が惹起され、これにより未治療腫瘍の成長が抑制され、改変バクテリア免疫療法によってもたらされるabscopal effect(※3)の概念を実証することに成功した。つまり、改変バクテリアは安全かつ局所的に、免疫療法を目的とした化学物質運搬を可能にし、全身性抗腫瘍免疫の獲得につなげることができるかもしれない。
※1 抗体=アンチボディの一部で抗体と同じ作用のあるもの
参考:http://agora-web.jp/archives/2040305.html
※2 通常、化学療法薬・抗がん薬の評価には、ヒト癌細胞株を免疫不全マウス(SCIDマウス、ヌードマウス)に移植したもので行われるが、これは免疫細胞であるT細胞・B細胞機能が欠損しているため、免疫療法の治療評価には適さない。これらのひゅおかには免疫系を完全に保持しているsyngenicマウスモデルが使用される。これはマウス由来の癌細胞株を同系マウスに移植し作製されたものである。MHCがどういつであるため、拒絶することなく生着する。
※3 アブスコパル効果…放射線療法などで、照射した部分だけでなく、照射していない部分の腫瘍も縮小することを指す。今回の場合は、局所注射した部分以外の腫瘍縮小効果が得られたということを意味している。
参考:http://agora-web.jp/archives/2040305.html
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/3/148_144/_pdf
Profiling of Pluripotency Factors in Single Cells and Early Embryos.
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Rantes/Ccl5 influences hematopoietic stem cell subtypes and causes myeloid skewing
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CCR5 Signaling Promotes Murine and Human Hematopoietic Regeneration following Ionizing Radiation
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Defining Hematopoietic Stem and Progenitor Cell Turnover by Analysis of Histone 2B-GFP Dilution
【読書感想】コンビニ人間
読書会の課題図書であったため読了。引き込まれる内容であり、ページ数も少なかったことからあっという間に読み終わりました。
「普通」とは何か、というのが大きな一つのテーマとなっているようだが、多様性多様性といいつつも実は見えない同調圧力にまみれた現代の日本をよく表している作品だと思いました。一見おかなしな主人公・古倉さんの言動や行動にも、部分的には共感できるという人はかなり多いのではないかと感じました。
18歳から36歳まで18年もコンビニバイトを続ける主人公は、支持されたマニュアル通りのことをきっちりこなし、コンビニでなく一般企業ならかなり有能な人物なのでは?という気がしましたが、他の読書会参加者から、これを通して資本主義社会を皮肉っているのではという意見が出てなるほどと思いました。
また、ラストはハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかという話にもなりました。個人的には、現代は本当に多様な職業があるので、彼女がもっとストレスなくハッピーに暮らしていける場所がコンビニ以外になかったのか、という気持ちから、あまりハッピーエンドとはいえないのではないかと思っていました。しかし、他の参加者からは、これがコンビニではなく、たとえば地雷撤去NGOだったり、途上国支援ボランティア団体であったり、伝統工芸をうけつぐ職人であったりしたら、「彼女は素晴らしい道のりを見つけた!」と称賛されるされるところを、そうならないのはコンビに対する偏見ではないか、という意見が出てそれもその通りだなと納得する思いでした。
結局、彼女にとっての幸せとは何か、というのが最後までよくわかりませんでしたが、こてこての純文学臭をいい意味で出さず(=文学的な、いわゆるかっこいい表現や言い回しを用いず)、現代社会をよく表した一冊だなと思いました。