Programmable bacteria induce durable tumor regression and systemic antitumor immunity
Programmable bacteria induce durable tumor regression and systemic antitumor immunity
Nature Medicine2019)
25, 1057–1063 (Synthetic biology(合成生物学)は、生きた細胞の遺伝子プログラムを通じ新たな治療の時代を迎えている。この変革的アプローチにより、多様な環境をインテリジェントに感知し、応答するように設計されたシステム、究極的にはこれに分子ベースの治療を超えた特異性と有効性が付加されたシステムの構築が可能となった。1つ注目されている分野として、in vivoにおいて治療目的のpayloadを選択的に放出する運搬システムとしてのバクテリア設計が挙げられる。今回我々は、腫瘍微小環境内においてのみ溶解し、CD47のナノボディ・アンタゴニスト(CD47nb)(※1)を放出する、非病原性大腸菌を開発した。このCD47は、いくつかのヒト腫瘍細胞において過剰発現している貪食抑制受容体である。我々は、CD47nbをtumor-colonizingバクテリアを用いて運搬することによって腫瘍浸潤Tリンパ球(tumor infiltrating lymphocyte)の活性を増加させ、早急は腫瘍縮小を促し、転移を防ぎ、結果として同系マウス腫瘍モデル(※2)の長期生存を可能にすることができた。さらに我々は、CD47nb発現バクテリアの局所注射より腫瘍抗原特異免疫反応が惹起され、これにより未治療腫瘍の成長が抑制され、改変バクテリア免疫療法によってもたらされるabscopal effect(※3)の概念を実証することに成功した。つまり、改変バクテリアは安全かつ局所的に、免疫療法を目的とした化学物質運搬を可能にし、全身性抗腫瘍免疫の獲得につなげることができるかもしれない。
※1 抗体=アンチボディの一部で抗体と同じ作用のあるもの
参考:http://agora-web.jp/archives/2040305.html
※2 通常、化学療法薬・抗がん薬の評価には、ヒト癌細胞株を免疫不全マウス(SCIDマウス、ヌードマウス)に移植したもので行われるが、これは免疫細胞であるT細胞・B細胞機能が欠損しているため、免疫療法の治療評価には適さない。これらのひゅおかには免疫系を完全に保持しているsyngenicマウスモデルが使用される。これはマウス由来の癌細胞株を同系マウスに移植し作製されたものである。MHCがどういつであるため、拒絶することなく生着する。
※3 アブスコパル効果…放射線療法などで、照射した部分だけでなく、照射していない部分の腫瘍も縮小することを指す。今回の場合は、局所注射した部分以外の腫瘍縮小効果が得られたということを意味している。
参考:http://agora-web.jp/archives/2040305.html
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/3/148_144/_pdf