1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

【読書感想】聖の青春

 幼いころから腎臓病を患い、幾度にも及ぶ入退院を繰り返しながらも、不断の努力で将棋の才能を磨き続け、将棋界の頂点・名人を目指した1人の棋士村山聖の一生を描いたノンフィクション作品。

「自分には時間がない」と言い、時には病床に伏しながら将棋を差し、時には自宅前で倒れ這うような状態で将棋会館に向かい将棋を差していくといった、将棋に対する強い情熱に何度も心打たれるような気持ちになった。また、まさに「天才棋士」というべき数多の常人離れしたエピソードの中にも、少女マンガを愛読したり風呂や掃除が苦手で不摂生な生活を送ったりと人間らしい1面もしばしば垣間見え、親しみももてた。

まさに命を削り将棋と向き合った人生は、読んでいる自分の心も動かされる思いであり、若くして夢半ばでなくなってはしまうが不思議な爽快感が読後に残る本だったと思う。