1人抄読部 兼 読書部

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Age-associated Characteristics of Murine Hematopoietic Stem Cells

 2000 Nov 6;192(9):1273-80.

Age-associated characteristics of murine hematopoietic stem cells.

 
造血幹細胞(HSC)の機能が年齢を経るにつれてどのように変化していくかということはについてはあまり知られていない。私たちは、CD34 -/low c-Kit + Sca-1 + lineage negative をマーカーとして(CD34-KSL)、C57BL/6マウスの骨髄から細胞を取り出し、クローンレベルHSCの加齢について調べた。CD34-KSL細胞の数は、週数を経るごとに徐々に増加が見られた。週齢に関わらず、これらの細胞(HSC)は、幹細胞因子及びIL-3とin vitroコロニーを形成したが、IL-3単独では形成しなかった。これらは、12日目にcolony-forming unit (CFU)-S(※1)形成をしなったが、これは、骨髄分化能を有した原始的細胞であることを示している。In vivoでの限界希釈移植(※2)は、多分化能を有する細胞は、CD34-KSL細胞集団においても未分離骨髄細胞集団においても2か月から18か月で約2倍に増加していることを示した。それに加えて、私たちは、HSCとは異なり、18か月マウスのCD34-KSL細胞の中に存在する新たな再増殖能を有する細胞分画について調べた。これらの再増殖細胞は、自己複製能は維持されているもののリンパ球系細胞への分化が制限されていることが2回目の移植で分かった。私たちは、造血幹細胞が、自己複製を繰り返す中で、週数を経るごとにその数が増加し、またリンパ球系細胞への分化能を失っていくという仮説を提案する。
 
※1…放射線照射したマウスに同系マウスの造血幹細胞移植を行うと、8-14日目にマウス脾臓に肉眼で観察できる結節が形成される。結節の数と移植した細胞の数は相関しており、1個の細胞が1個の結節を作る。この結節を作る細胞をCFU-S(colony forming unit in spleen)と呼ぶ。8日目の結節は赤芽球が主体であるのに対して、12日目に形成される結節は全ての系列の細胞を産生できることが分かっている。すなわちDay 12 CFU-Sは多能性幹細胞の指標として用いられている。
 
※2…限界希釈移植。1960年代に行われた実験そのものである。サンプルを段階希釈し、10匹中3匹生着するレンジを探す。あとはELDAのウェブサイトに値を突っ込むことで造血幹細胞が何細胞中1個の割合と出てくる。
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