1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

IFNalpha activates dormant haematopoietic stem cells in vivo.

 2009 Apr 16;458(7240):904-8. doi: 10.1038/nature07815. Epub 2009 Feb 11.

IFNalpha activates dormant haematopoietic stem cells in vivo.

 
血液システムの維持は休眠造血幹細胞(HSC)の長期自己複製能に依存している。これらの細胞が障害を受けると、恒常性を維持すべく速やかに再増殖する。HSCの休眠期からの脱出を促進するシグナル伝達分子については、未だほとんど知られていない。私たちは、今回INFαを用いてマウスを処理することによって、HSCが効率的にG0期を脱出しアクティブな細胞周期に入ることを示すことができた。HSCはINFα処理によって、STAT1やPKB/Aktのリン酸化の増加、INFα標的遺伝子の発現、Stem cell antigen-1の制限などの反応を示した。INFα/β受容体、STAT1またはSca-1が欠損したHSCは、INFαの刺激には反応せず、STAT-1やSca-1を介しINFα誘導性のHSC増殖を示した。休眠期HSCは、5-FUのような抗増殖性化学療法薬に対しては抵抗性であるが、予めINFαで処理され増殖誘導されたHSCはin vivoでは5-FU曝露で効果的に阻害された。反対に、INFαで慢性的に活性化されているHSCは、機能の低下が見られ、競合的再増殖アッセイにおいて活性化できないifnar(-/-)細胞とは急速に競合しなくなってしまう。INFα経路の慢性的な活性化はHSCの機能を落としてしまう一方で、急性期のINFα曝露はIn vivoにおいて休眠期HSCの増殖を促進する。これらのデータは長らく不明であった白血病細胞に対するINFαの臨床作用を明らかにし、癌幹細胞を標的としたタイプ1インターフェロンの新たな応用の可能性を高めるであろう。
 
※「インターフェロン」といった場合、多くはインターフェロンタイプ1を差し、タイプ1の中にINFα、β、ωなど5種類のINFが含まれている。