1人抄読部 兼 読書部

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Gene therapy improves dental manifestations in hypophosphatasia model mice.

 2017 Jun;52(3):471-478. doi: 10.1111/jre.12412. Epub 2016 Aug 26.

Gene therapy improves dental manifestations in hypophosphatasia model mice.


BACKGROUND AND OBJECTIVE

低ホスファターゼ症は、稀な遺伝性の骨格疾患であり、骨形成不全、組織非特異的ALP(TNSALP)の活性低下が特徴である。TNSALPをコードしている肝・骨・腎のALP遺伝子(ALPL)の変異によってこの疾患は起こる。セメント質の形成不全による早期の乳歯脱落、歯周靭帯の幼弱化、歯槽骨融解などが主な口腔内所見として見られる。乳歯の早期脱落は、しばしば低ホスファターゼ症の早期診断の一助となる。そして、この疾患の患者の根本的治療や入試早期脱落を防ぐ効果的な方法は未だにないが、いくつかの治療法が可能であることが報告されており、遺伝子治療もその一つである。遺伝子治療は、乳児低ホスファターゼ症モデルマウスであるTNSALP ノックアウトマウス (Alpl-/- )に応用され、その全身状態を改善させた。この研究にて私たちは、遺伝子治療はTNSALP ノックアウトマウス (Alpl-/- )の歯牙の状態を改善させるかを検討した。
 

MATERIAL AND METHODS

生後2日のマウスに致死量に近い4Gyの放射線照射を行い、Alpl-/-マウスに、骨親和型TNSALPを発現させたレンチウイルスベクターで形質導入した骨時細胞を経静脈から注射した(n=3)。Wild-type (Alpl+/+ )、heterozygous マウス(Alpl+/- )、Alpl-/-マウスはそれぞれのマウスは9日齢で分析され(各n=3)、一方でAlpl+/+マウスと治療・未治療Alpl-/-マウスは3か月齢時に、Alpl+/-とAlpl-/-マウスは1か月齢時にも分析された。歯槽骨形成を評価するために、1か月時の単一下顎半切片を小動物CT機器を用いて解析した。その他の下顎半切片は、9日齢、1か月齢、3か月齢時に採取され、ヘマトキシリン・エオジン染色及び免疫染色でセメント質のマーカーであるオステオポンチンを同定し解析した。

RESULTS

オステオポンチンの免疫組織化学的解析の結果、Alpl-/-マウスは、ヒトの歯の表現型と同様にセメント質と歯槽骨の形成不全が見られた。セメント質形成は、遺伝子治療を受けたAlpl-/-では明らかに観察されたが、Wild type Alpl+/+と同等のレベルまでは回復しなかった。マイクロCT検査の結果、遺伝子治療はAlpl-/-マウスの歯槽骨の骨密度をAlpl+/+に近いレベルまで改善させた。

CONCLUSIONS

私たちの研究結果は、遺伝子治療がAlpl-/-の状態を改善し得ることを示唆しており、著しい歯槽骨形成及びセメント質形成の中等度の改善に役立っていることを指示している。これらは、乳児早期自然脱落を防ぐ効果がある可能性がある。