1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

Clonal analysis unveils self-renewing lineage-restricted progenitors generated directly from hematopoietic stem cells.

 2013 Aug 29;154(5):1112-1126. doi: 10.1016/j.cell.2013.08.007.

Clonal analysis unveils self-renewing lineage-restricted progenitors generated directly from hematopoietic stem cells.

 
造血幹細胞は、自己複製能力が制限された多能前駆細胞(MPP)へと分化し、MPPは最終的には系統が限定された前駆細胞へ段階的に分化していくことが知られている。単一細胞移植システムとマーカーマウスを用い、私たちは、長期に再増殖活動を行う骨髄球系に限定した前駆細胞を偶発的に発見した。この細胞は、表現型的にHSCと定義された細胞群の中に存在する、巨核球、巨核赤血球、あるいは一般的骨髄細胞(それぞれMkRPs, MERPs, or CMRPs)とHSCとともに系統的に関与している。娘細胞ペアアッセイと移植を組み合わせ評価したところ(※)、HSCは対称分裂をするか、または非対象分裂によって骨髄系に限定された前駆細胞へ直接分化することが分かったこれら骨髄系へのバイパス経路はablation stressへの迅速な対応を可能にする可能性がある。今回の研究結果は、自己複製能の喪失と特定の分化ステージを踏んだ段階的分化は、同系統のものではなく独立している可能性があり、造血幹細胞分化の新たなモデルを示唆している。
 
 
※母細胞が分裂したのちの2個の娘細胞の機能を比較することにより、母細胞がどのような分裂様式をとったのかを評価するもの。
1細胞を短時間だけ培養し2細胞に分裂した際に生じた2個の娘細胞を1つずつに分けて、それぞれの娘細胞について1細胞の移植を行い評価した。そののち、末梢血のキメラ化を定期的に測定することにより、2個の娘細胞の分化能を評価した。母細胞の分化能は、2個の娘細胞の分化能をあわせたものであると推測できる。