1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

Oestrogen increases haematopoietic stem-cell self-renewal in females and during pregnancy

Oestrogen increases haematopoietic stem-cell self-renewal in females and during pregnancy

Nature volume505pages555–558 (23 January 2014) | Download Citation

性器や脳といった性的二形の哺乳動物は、性ホルモンによって直接的あるいは間接的に制限される幹細胞を含んでいる。性別による特異的形態を示さない組織における生理学的機能、ホルモン調整においても性差を示すのかという点は、大きな疑問である。造血細胞の中には、その最終分化と機能が性ホルモンによって制御されているものがある。しかし造血幹細胞機能はいずれの性別でも似通っていると考えられている。今回、私たちは、造血幹細胞の細胞周期調節にエストロゲンによる性差が見られることを示すのに成功した。メスのマウスにおける造血幹細胞は、オスマウスより有意に早く分裂する。この違いは、精巣ではなく卵巣に依存している。卵巣で主に産生されているエストラジオールの注射によりオスにおいてもメスにおいても、造血幹細胞の分裂が増加することが分かった。エストロゲン値は、妊娠中に増加し、また造血幹細胞の分裂、造血幹細胞頻度、細胞性、脾臓における赤血球生成を増加させることがわかった。造血幹細胞は、エストロゲン受容体α(ERα)が高レベルで発現しているのである。造血幹細胞に発現するERαを条件付きで欠失させると、造血幹細胞分裂の減少がメスでは見られたもののオスでは見られず、妊娠中の造血幹細胞分裂、造血幹細胞頻度、赤血球生成の増加を減少させた。エストロゲン/ERα伝達は造血幹細胞の自己複製を促進し、妊娠中の脾臓における造血幹細胞および赤血球生成を促進する。