1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

Long-term ex vivo haematopoietic-stem-cell expansion allows nonconditioned transplantation

Letter Published: 

Long-term ex vivo haematopoietic-stem-cell expansion allows nonconditioned transplantation

Insulin Receptor Associates with Promoters Genome-wide and Regulates Gene Expression.

 2019 Apr 18;177(3):722-736.e22. doi: 10.1016/j.cell.2019.02.030. Epub 2019 Apr 4.

Insulin Receptor Associates with Promoters Genome-wide and Regulates Gene Expression.

 
インスリン受容体シグナル伝達は、正常な代謝制御の中心的な役割を果たしており、こうの制御不全によって慢性疾患が起きる。インスリン受容体は、細胞膜でインスリンと結合し、細胞質キナーゼを介し迅速なシグナル伝達を行う。しかしインスリンの長期的な効果発現機序については未だ不明である。今回、我々は、核内でRNAポリメラーゼⅡを活性化、ゲノムワイドなプロモーターの顕著な濃縮にインスリン受容体が関与している可能性を提示する。標的となる遺伝子は、インスリン機能の一部である脂質代謝やタンパク質合成、またインスリンが関与する疾患である糖尿病、神経変性、癌などに関与している者と思われる。インスリン受容体結合はインスリンによって増加し、インスリン抵抗性疾患モデルでは障害されることが分かった。インスリン受容体によるプロモーター結合は、HCF-1と転写因子によって媒介され、HCF-1依存性のインスリンによる遺伝子制御経路の存在を明らかにした。これらの結果から、インスリン受容体が転写機構と相互作用を及ぼし、インスリンの生理的機能あるいはインスリン関連疾患におけるインスリンの効果発現に関与する遺伝子を制御する経路を決定づけることを示している。

ゲノム編集を伴う生殖医療の可能性と課題

生殖細胞系列の遺伝的改変をめぐる議論

・世界初の試験管ベビー

体外受精だと先天異常が大幅に増える?宗教団体からも批判多数

その中で初めて健康で生まれた児は非常に価値があった

・生殖補助医療:ART

・生殖自己決定権

子供を持てるかどうかは自然に任せる

子供を持たない

どうしても子供がほしい(養子縁組含む)

→ARTを選択するというこは生まれてくる子供は同意できない

 

女性不妊に向けた卵子細胞質移植

卵子精子と若卵子の一部を注入 →遺伝子には3人の親がいる

 

有識者らはゲノム編集の生殖応用を容認していないことが多い→今後要議論

 

臨床研究における課題

 

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【読書感想】雪国

言わずと知れた川端康成の小説ですが、いまさらながら読了…

 

日本語が大変美しく、歴史に名を残す文豪はこんなにも洗練されつくした日本語を物語の最初から最後までつづることができるのかと驚きを隠せない気持ちでした。

 

川端氏はノーベル文学賞を受賞していますが、外国人であろうノーベル賞選定者が、仮にどんなに優れた翻訳者による訳であろうと、この際立って耽美な日本語を十分に理解していると言えるのだろうか…とやや不思議に思う気持ちもないわけではありませんでした。しかしノーベル文学賞にまさにふさわしいレベルの作家であることも痛感させられる思いでした。

 

ストーリーは起承転結がはっきりしているわけではないので、その点は人によっては面白くなく感じるかもしれません(実際、私も幾分かは感じました)。時代背景を理解するのにもやや時間を要し、また注釈が非常に多く、これに気が散ってしまう部分もあり、内容に集中するには2回ほど通読するのが良いかもしれません。

 

非常に有名な作品ですが、若いうちに読んでおくべきかと問われると、駒子と島村の関係や官能的描写を、芸術として捉え、ある程度理解・共感するにはそれなりに大人になってから読むほうがよいように個人的には思います。

Lnk controls mouse hematopoietic stem cell self-renewal and quiescence through direct interactions with JAK2.

 2008 Aug;118(8):2832-44. doi: 10.1172/JCI35808.

Lnk controls mouse hematopoietic stem cell self-renewal and quiescence through direct interactions with JAK2.

 
巨核球の産生という役割以外に、トロンボポエチン(TPO)活性化によって誘発される、受容体、骨髄増殖性白血病ウイルスプロトオンコジーン(c-Mpl, or Mpl)のシグナル伝達は、HSCの恒常性や自己複製能を制御している。定常状態下では、阻害性アダプタータンパク質であるLnkが欠損しているマウスは、自己複製能が増強したHSCをプールしているとされている。我々はLnk欠損マウスのHSCは、ワイルド・タイプのHSCと比較して、休止期分画の増加、細胞周期動態の減速、in vivoでの細胞破壊性5-フルオロウラシル(5-FU)反復治療に対する耐性増加が見られることを発見した。さらに我々は、LnkがHSCの休止期と自己複製能を主にMplを介して制御しているという遺伝学的確証を得ることに成功した。この所見とも整合性が取れるが、Lnk欠損HSCはTPOに対するJAK2の特異的な活性化を強化することが分かった。生化学実験により、LnkはTPO刺激によりJAK2のリン酸チロシン残気に直接結合することが分かった。注目すべきことに、骨髄増殖性疾患において高頻度で見られるJAK2 V617F変異は、Lnk結合能を有している。しれゆえ私たちは、Lnkは幹細胞におけるJAK2の生理的ネガティブ・レギュレーターであり、またTPO/Mpl/JAK2/Lnkは幹細胞の自己複製能と休止期をコントロール主要な制御経路であると認識することができるだろう。

Lnk deficiency partially mitigates hematopoietic stem cell aging

. Author manuscript; available in PMC 2013 Dec 1.
 
Published in final edited form as:
PMCID: PMC3500428
NIHMSID: NIHMS394581
PMID: 22812478

Lnk deficiency partially mitigates hematopoietic stem cell aging

加齢に伴い、骨髄中のHSCの数は増加していくが、一方でその再増殖能は低下していく。さらに、加齢HSCは、移植による再増殖能評価実験において、骨髄系細胞に偏った分化能を示すことが分かっている。アダプター蛋白であるLnkは、HSCの恒常性において重要なネガティブ・レギュレーターであり、Lnk欠損は若年マウスにおける10倍ものHSC数増加に関与している。しかし、ワイルド・タイプで見られる加齢に伴う機能的HSC数の増加はLnk欠損マウスでは見られない。重要なことに、加齢Lnk nullマウス由来のHSCは、その自己複製能が著しく上昇しておりなおかつ消耗も少ないことが連続移植実験の結果からわかっている。加えて、Lnk欠損により、加齢に関連したLineage-biasも補正される。トランスクリプトーム解析によってワイルド・タイプとLnk欠損HSCは、遺伝子発現パターンにおいて多くの加齢関連変化を共有していることが分かった。それにも関わらずLnk null HSCは選択的伝達経路におけるHSC自己複製や加齢に関与している可能性のある構成部分の遺伝子発現変化を呈した。これらを考えると、これらの結果は、Lnkの喪失は部分的に加齢関連HSC変化を軽減できる可能性を示唆している。

Single-Cell RNA-Seq Reveals AML Hierarchies Relevant to Disease Progression and Immunity.

 2019 Mar 7;176(6):1265-1281.e24. doi: 10.1016/j.cell.2019.01.031. Epub 2019 Feb 28.

Single-Cell RNA-Seq Reveals AML Hierarchies Relevant to Disease Progression and Immunity.

 

急性骨髄性白血病(AML)は、複雑な微小環境の中に生じる不均一な疾患であり、その病状進行にどのような細胞型が関与しているかを解明する努力が続けられてきた。私たちは、16人のAML患者と5人の健康なドナーから40の骨髄穿刺検体を得、またそこから38,410個の細胞を、ジェノタイピングとシングルセルRNAシークエンスを組み合わせて、プロファイルした。その後、我々は、機械学習による分類を用い、患者間あるいは同じ腫瘍内のサブクローン間でその量が異なる悪性細胞型スペクトラムを区別することを試みた。細胞型組成は、豊富なFLT3-ITDと前駆細胞用細胞の関連を含む、原型遺伝的病変と関連していた。原始的AML細胞は、幹細胞生徒骨髄プライミング遺伝子の共発現を伴う調節不全転写プログラムを示し、また予後的な重要性を有していた。分化した単球様AMLは、多様な免疫調節遺伝子を発現し、In vitroでT細胞の活性を抑制した。結論としては、精密医療や免疫療法に役立つ単細胞技術、AML細胞状態のアトラス、レギュレーター、マーカーをここに示す。