1人抄読部 兼 読書部

生命科学系の論文のサマリーを読んでいきます。また時々趣味の読書の感想も書いていきます。

Age-associated changes in human hematopoietic stem cells.

 2017 Jan;54(1):39-42. doi: 10.1053/j.seminhematol.2016.10.004. Epub 2016 Oct 20.

Age-associated changes in human hematopoietic stem cells.

 
加齢は、ヒトの造血システムの機能に多大な影響を与える。今回のレビューは、主にヒト造血幹細胞(HSC)の加齢による影響について取り上げる。年齢によって、その数は増加するものの、造血幹細胞の自己複製能及び移植時の再構築能は減少していく。また、ヒトHSCは加齢に伴い、より骨髄系細胞の分化しやすくなるというmyeloid-biasedを呈する。これはおそらく、ヒトHSC細胞が年齢に伴いよりクローナルになっていき、骨髄選択性が増していくからかと思われる。年齢とともに主要となってくるHSCクローンの変化は、
年齢にともなって発生し得る骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、白血病などのリスクをあげる疾患の原因となるような遺伝的、あるいはエピジェネティックな変化も含まれる可能性がある。このような加齢ヒトHSCクローン選択は、一部は骨髄微小環境の変化に起因しているだろう。マウスの造血及び造血幹細胞の加齢の影響に関しては、大きく研究が進んでいるが、ヒトHSCに関してはまだ十分な研究がなされていない。ヒト造血幹細胞の加齢の過程における評価を継続していくことは、マウスやその他のモデル実験動物における所見や研究結果が、どの程度臨床セッティングでのヒトにおいて応用できるかを判断する上で重要であろう。